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『ナクソス島のアリアドネ』

二期会の『ナクソス島のアリアドネ』を観た(6月29日/東京文化会館)。

Vorspiel の出だしから、「おお、これはシュトラウス」という響きで、期待を持って臨んだ。今回の舞台は、演出が非常に緻密かつ考え抜かれたもので、そのせいもあるのか、またオーケストラのシュトラウス的な響きもあってか、歌手達の歌も動きもとても自然でスムーズな印象を受けた。

その中でまず特筆したいのは、やはりツェルビネッタ役の安井陽子。Vorspiel から、ドキっとするくらい、声質や歌い方がツェルビネッタのイメージ通りで、「これは劇中劇のオペラになったら、一体どうなるんだろうか」とこわごわ(?)聴いていたら、これが本当に素晴らしかった。高い技術も去ることながら、全く無理な発声がなく、とても軽やかで美しい歌を聴かせてくれた。今までどのような有名な歌手が歌ったツェルビネッタ役でも、例の聴かせどころでは「技術を聴かせ、綺麗に流す」という感じの歌い方だったのに対して、安井ツェルビネッタは、「私は、こんなことを考えているの」という、ツェルビネッタ役が本来持っているはずの聡明さや人柄までをも表現し切っていた。

白状すれば、向こう一年間の研究対象に『アリアドネ』を選んでいる身としては、あわよくば「論文ネタ」を拾おうと下心を持って聴いていたのだが、そんなものも、このツェルビネッタには軽やかにあしらわれてしまったようで、客席側でほとんどノックアウト状態になっていた。

あと、良い意味で予想を裏切ってくれたのが、コメディア・デラルテの4人(萩原潤・森田有生・斉木健詞・児玉和弘)。日本人が「わざとらしいくらい、大仰な動き」をしようとすると、「がんばってやらなければ」という「一生懸命さ」が邪魔をしてしまい、観ているほうも辛くなってしまうことが多いのだが、当日の4人はとても自然な動きと歌で、素直に楽しめた。

作曲家役の小林由佳も、無理のない伸びやかな声で、ひたむきで陶酔気味なこの役柄の雰囲気が良く出ていたが、それにしても随分と格好の良い立ち姿だった。何となくの印象だが、この人に合った役柄なのではないかな、と感じた。

個人的に注目している役柄の一つ、ダンス教師(小原啓楼)も、ニヤリとしてしまうようなこの役のキャラクターが良く出ていて、とても興味深かった。(2008/06/30)

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