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聖徳大学が挑む2種類の《魔笛》公演

現在所属している研究会で、タイトルに書いた題目でレクチャーがあった(7月29日/早稲田大学大隈記念タワー)。

9月28日にサントリーホールで上演される《魔笛》のほかに、学内生対象とのことだが、10月24日に聖徳大学川並香順記念講堂で、ドイツ語での歌唱+日本語の台詞で上演されるそうだ(サントリーホールの公演ではドイツ語+日本語字幕)。

この日のレクチャーの問題点は、主に原語上演と訳詞上演について。それも、今や日本でも脚光を浴びているアート・マネージメントという枠組みで捉えるのではなく、発信者として・制作サイドからの問題提供、ということだった。

話題提供者が順にそれぞれ歌手・演出家・作曲家の立場から思うところを述べられていったのだが、少なくともこの日にお話しになった方たちは、「吟味されつくした言葉(台詞)に、吟味されつくした音楽がついているわけだから、それを別の言葉で歌うことについては、当然問題もあるし、大変に難しい」という根本的な問題意識を強く持っていらっしゃった。

日本語は、その構成上、原語よりもシラブルが多くなってしまうため、どうしても日本語歌詞で歌うと無理が出てしまう。しかも、その原語が担っている(あるいは、その原語歌詞が包含している)文化的背景は日本語歌詞にはなりにくい、という事情もある。

そのあたりの実際を、聖徳大学准教授で二期会会員でもあるバリトン歌手藪西正道氏が、モーツァルトの《フィガロの結婚》から冒頭の部分と、有名なアリア「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」を例にとって、原語のイタリア語と日本語、両方の歌詞で歌い比べてくださった。

確かに、日本語で歌うと、大まかな状況や筋は割りとストレートに入ってくる。しかし、日本語に翻訳される過程で取りこぼされ犠牲になった、言葉の余白とでもいう部分はそもそも「なかったこと」になってしまう、というジレンマが常に付きまとうことが改めて痛感された。また、やはり聖徳大学准教授であるソプラノ歌手の島崎智子氏が「同じ音楽でも、歌う言語によって、思考回路が違ってくるようで、日本語で歌う場合よりも、原語で歌う場合のほうが、よりストレートな表現をしたくなります」とお話しになったのには大変に興味を覚えた。

何故「原語で歌う場合のほうがストレートな表現をしたくなる」のかという問題に対する私なりの考えとして、会場で配られたコメントペーパーに「言語というのは、単なる伝達手段なだけではなく、その言葉を話す人の国民性や文化的背景、さらにその国民としての考え方まで表すものだからだと思います」というようなことを書いて出したところ、藪西氏と島崎氏お二方ともが深く肯いてくださり、お二人が留学先のイタリアでレッスンの際にご苦労なさった、「(単なるコミュニケーションの次元だけではなく、それこそ文化的背景について感じられた)言葉の壁」についてのお話などをしてくださった。私の場合は、純粋に言語学的な興味から上のような考えを抱くに至ったのだが、歌手の方たちからも、その裏づけとなるようなお話を伺うことができて、大変有意義なひとときとなった。

このような興味深い機会を提供してくださった、早稲田大学教授の丸本隆先生、ならびに聖徳大学准教授の山本まり子先生に感謝申し上げます。

そして、何よりも、私の拙い質問とも言えないような呟きに対して、深いお答えをくださった、藪西正道先生と島崎智子先生、本当にどうもありがとうございました。しかも図々しく名刺を持ってズカズカと突進した私に、にこやかに応対してくださったことにも重ねて御礼申し上げます。これに懲りずに(滝汗)今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。(2008/07/31)

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コメント

遅れちゃいましたが(汗)
お誕生日おめでとうございます~♪
昨日はどんなお誕生日でしたか?
また一年、ウルズラさんとウルズラご一家にとって素敵な一年でありますように!

投稿: めそ | 2008年8月 8日 (金) 00時02分

めそちゃん

お祝いの言葉、どうもありがと~heart01

毎年毎年、一番暑い頃に一歳トシを取るのって、堪えるわ~(笑)。誕生日ディナーは、そうめんと枝豆、ビールだったわっbeer

投稿: ウルズラ | 2008年8月 8日 (金) 17時42分

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