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クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル

クリスチャン・ツィメルマンといえば、貴公子然とした風貌で日本でも若い女性に大変人気があり、チケットは瞬間蒸発、という時期が長かった。そのため、「チケット売り切れ」の憂き目に遭い続け、長らく不戦敗が続いていたので、今まで一度も生で聴いたことがなかった。それが、このたび新潟で聴く機会を得た(7月12日・りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館)。

1曲目のバッハ『パルティータ第2番 BWV826』では、ツィメルマンの確かな音楽性に裏打ちされた技術の高さがよく出ていたと思う。ペダリングの巧みさも驚くほどだった。

2曲目はベートーヴェンのソナタ第8番『悲愴』で、私自身は、この「名曲」でここまで「おお、このベートーヴェン的な響き」と感動するような演奏を聴いたことがなかったのだが、同行者は「ベートーヴェンというより、ツィメルマン独特のベートーヴェンだったなぁ」「綺麗な音なんだけど、ちょっと軽めの響きかな」と言っていた。聴き方は人それぞれである。

3曲目のブラームス『4つのピアノ小品』では、なるほど、ブラームスだったら、もう少しズンとくるような響きがあってもいいかな、と思ったのだが、これに関して同行者は「いや、あのブラームスは良かったよ。この曲は、本来こういう響きなんだと思うよ」と。ううむ。

4曲目は20世紀のポーランド人作曲家バツェヴィチのソナタ第2番。初めて聴いた曲だったが、これが熱い名演。色彩豊か、というと何だか陳腐な表現になってしまうが、各声部がそれぞれ、独立して聴く者に語りかけてくるようで、非常に整理された響きなのだが、それでいて饒舌(?ちょっと違う感じなのだが・・・)な曲で、興味深かった。

全体の印象として、ツィメルマンの音は p などの弱音ほど大切にしているようで、盛り上げ方も感情過多に流れず、少し寂しげな優しさというか、陰影に富んだ響きで音量を増していく感じがした。きっと、いろいろな体験からくる深い内面性による解釈なのだろう。まるで、フレーズをひたと見つめ、それから掌の中で転がすかのような瞬間がしばしばあり、見当はずれかもしれないが、ホロヴィッツのモーツァルトを想起させるような心持すらした。

また機会があれば、是非聴きたいピアニストだ。(2008/07/15)

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コメント

まあ、それで新潟に・・・・・。

ベートーベンの「悲愴」は
「これでもかっ」ていうくらいの弾きかたをする奏者が多いように思います。
悲愴というより「悲惨」ってかんじ?

奏者は作者の心を思いながら弾くのか
自分が体験したその曲を体現しているのか
自分で弾きたいのか
誰かに聴いてもらいたいのか
そんなところでも違うのかしら?

投稿: parko | 2008年7月16日 (水) 21時09分

そうね、殊に第一楽章はそんな感じが多いかも。かくいう私も10代の夢見る乙女^^;の頃に弾いた時はそんな風だったような・・・もしかして、parko さんも??

 #ワタシの場合はテクニックも「悲惨」だったわ・・・

どのように演奏するのか、譜面に書かれている通りに忠実に弾くのか、自分の個性や内面を反映させて弾くのか・・・。「作曲家か、演奏家か」という命題は、ずっと問われ続けていますよね。

英語でもドイツ語でも “interpretation (ドイツ語だと Interpretation)” という語には、「解釈」と「演奏」の両方の意味があることからも、そのことが伺える気がします。辞書によっては「解釈に則った演奏」と、わざわざ書いてあるものもありますが・・・

最近の私の考えでは、もちろん演奏する際の解釈がないのは論外だけど、演奏家の「内面」や「考え」がナマのまま演奏に出ちゃっては良くないんじゃないかな。演奏も「芸術」として昇華した形になっていなければ。アマチュアが楽しみの次元で弾く場合にはその限りではないかも知れないけれど、プロの演奏家はそうでないとね、ということかな。まぁでも、いくらアマチュアだとは言っても、自分にできる範囲で、できる限りの努力をしたほうが良いとは思います。

で、堅サマはどうだったのよ(笑)。ブログにアップしようとすると、切なくて押しつぶされそうになるってか?

投稿: ウルズラ | 2008年7月17日 (木) 14時43分

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