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芸術強化月間

新年度は誰でもバタバタしますよね。私も御多分に漏れずそうでした(^_^;)。オペラや演奏会、舞台にも毎週通っていて、書き留めなきゃと思いつつ、気がついたらもう4月も終わろうとしている・・・。ので、もう詳細は諦めて、美貌的もとい備忘的記録を。


まず、4月13日は新国立劇場でベルクの《ヴォツェック》を観ました。





クリーゲンブルクの演出は、「観る」立場からすれば、作品解釈と問題提起の点で非常に興味深いものでした。ヴォツェックの家の壁にかかっているのはてっきり磔刑像なのかと思っていたら、あれは子宮なのだそうです。そう言われてみれば、十字架はなかったのでした。スタッフから伺って判ったことでしたが、これには出演者も気付いていなかったようで、となるとますます、各人に潜む原罪の象徴という根深いテーマを表しているようでもあり、そういう細部への拘りは個人的にマルです。しかしながら、作品解釈を可視化するだけが演出の役割ではないということが、どうも忘れられかけている昨今。ことオペラに関しては、何よりもまず作品を表現しているのは音楽であり、歌手である、ということをないがしろにしないで欲しいなあというのが正直なところです。


4月19日はトッパンホールで平野玲音ちゃんのチェロリサイタルでした。





Reine pur と題されたシリーズで、第7回の今回のテーマは「歌」。メゾソプラノの菅野祥子さんとのコラボでした。チェロとピアノのデュオと、歌とチェロとピアノのトリオとが交互に組まれていて聴き応えがありました。毎回、玲音ちゃん自身が意欲的にプログラムを構成していて、聴く度に深まる、チェロの音色と「玲音ちゃん・ヲタク疑惑」。次回のテーマは「二重帝国の時代」。楽しみです!


4月25日、王子ホールでタベア・ツィンマーマンのヴィオラリサイタル。





今回はレーガー、バッハ、ヒンデミットの、いずれも無伴奏曲ばかり。タベア様のヴィオラの音色を心ゆくまで堪能しました。このラインナップだと、どうしてもレーガーとヒンデミットに期待の比重がかかってしまうのが人情というものでしょうが、バッハが凄かった! バッハは無伴奏ヴァイオリンソナタとチェロ組から一曲ずつ演奏されたのですが、それぞれにヴァイオリン曲でありチェロ組曲であることが損なわれていないのに感動しました。それでも、音色はあくまでヴィオラ。これって、もの凄いことだと思います。そしてやはり、ヒンデミットは圧巻でした! アンコールのヴュータンのカプリッチョ、美しい。ホフマンスタールのテクストに合いそうだと思いました。


4月27日。静岡芸術劇場で《ファウスト》。オペラではなく、ゲーテの戯曲です。





演出家シュテーマンは、登場人物を分裂症的に表現していました。メフィストは悪魔なのではなく、ファウストの内に在る悪魔性なのである。人間という存在には相容れない多面性が共存する、という解釈は《ファウスト》という作品においては当然なされて然るべきものではあります。役者が入れ替わりながらそれぞれが何役も演じる一人芝居、という趣向はそのことをあからさまに見せつけることに成功していたと思います。シュテーマンの才能は疑いようもないですし、この演出を否定するつもりは毛頭ありません。ただ、これは「現代に潜む病巣」という点に絞った場合に絶大な効力を発揮するのでしょう。ゲーテの戯曲作品そのものは、もう少しタフな性質があるとも改めて思いました。つまり、もっと直球勝負の正統的な演出だと、更に違う新しい側面がむしろ出る可能性もある、ということです。そういうことに気づかせるのも、あるいは演出の意図なのかもしれませんね。ちょっと感ばしったヒステリックな表現は個人的には正直苦手な部類で衝撃的でしたが、舞台としては完成度の非常に高いものだったと感じました。

かように、息をつくいとまもなく濃密な一ヶ月を過ごしております。
(2014/04/28)

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